現在、世界で最も使われている CMS(コンテンツマネジメントシステム)は WordPress ですが、その WordPress で用いられている言語が PHP です。
PHP の処理におけるパフォーマンスは、WordPress の表示速度などのパフォーマンスにも大きく影響を与えるため、非常に重要だと言えます。
ただ、サーバーを単に使ってみるだけでは、体感的に速いとか、重いという印象を受ける程度で、実際にどこのサーバーがよりよいのかはわかりにくいところがあります。
そこで、昨年も実施したベンチマークツールを利用したテストで、各レンタルサーバーにおける PHP のパフォーマンスをチェックし、比較してみたいと思います。
・PHP Benchmark でレンタルサーバー各社のパフォーマンスを比較【2016年版】
PHP のパフォーマンスを 2つのツールでチェック
今回、PHP のパフォーマンスをチェックするにあたり、以下の 2つのツールを利用しました。
- PHP Benchmark
- PHPspeed
PHP Benchmark は、FREE Web Hosting が配布しているスクリプトで、PHP を用いた単純な計算と文字列を用いた処理を実行させ、その実行速度からサーバーの性能を確認できるツールです。基本的に、データベースなどが絡まない PHP 自体の処理能力を確認するものと言えます。
また、PHPspeed は、PHP を利用して MySQL を含めたパフォーマンスをチェックしたり、データの読み書きテストなどを含めた、全部で 6つのテストを実施できるツールです。
この 6つのテストのうち、PHP の処理に関する以下の 2つのテストのデータをあわせて比較します。
- Synthetic PHP BenchMark(PHP 総合ベンチマーク / PHP Benchmark に近い)
- Real World PHP Test(PHP の実環境テスト / 4つの様々なサイズの PHP ページを読み込む時間を計測)
以上 3つの、PHP に関するテスト結果を比較してみました。
ベンチマークの実施概要
まず、できるだけ同じ条件でサーバーの実力をチェックするため、PHP のバージョンは PHP5.6 に統一して実施しています。(WebARENA のみ、まだ PHP5.6 が利用できないため、PHP5.3)
実施時間に関しては、平日に時間帯を変え、2~3時間おきに全部で 8回実行しました。
レンタルサーバーは昼間と夜間帯では負荷が異なることが多く、実際のばらつきなどもチェックするために、朝の9時~夜の2時にかけて、となるべく広い時間帯になるよう実施しています。
PHP Benchmark は、1回につき、5秒のインターバルを開けつつ、全部で12回同じ処理を実行し、各処理においてかかった時間を表示します。
この12回の結果の中で、ばらつきを除いた「最大値と最小値を除いた中間値にあたる 10回の平均値」を比較します。
結果の数値は、1つの処理を行うのにどれだけ時間がかかったかを示しているため、数値が小さいほうがよりパフォーマンスが高いことを示しています。
一方、PHPspeed の 2つのテスト結果は逆で、数値が大きいほうがよりパフォーマンスが高いことを示します。
PHP のパフォーマンス比較
では、テストの結果を見てみましょう。
各ツールは全く違うテストを行っており、結果の出し方も異なっているため、横並びで比較することはできません。そのため、まず各ツールの結果に対しての順位をそれぞれ出し、次にその順位をトータルでランク付けして、「総合順位」としました。
総合順位の順番に上から並べています。
PHP benchmark | 順位 | Synthetic PHP BenchMark | 順位 | Real World PHP Test | 順位 | 合計 | 総合順位 | |
カゴヤ | 12.1 | 2 | 19851 | 1 | 24483 | 1 | 4 | 1 |
WADAX | 11.1 | 1 | 15410 | 3 | 15598 | 3 | 7 | 2 |
エックスサーバー | 25.1 | 9 | 16930 | 2 | 18703 | 2 | 13 | 3 |
sixcore | 15.6 | 3 | 14029 | 4 | 13200 | 6 | 13 | 3 |
heteml | 20.5 | 7 | 11782 | 5 | 14590 | 5 | 17 | 5 |
mixhost | 20.6 | 8 | 11244 | 6 | 14680 | 4 | 18 | 6 |
CPI | 18 | 4 | 10912 | 7 | 9704 | 9 | 20 | 7 |
クローバー | 20 | 6 | 10019 | 9 | 9990 | 8 | 23 | 8 |
さくら | 18.6 | 5 | 10577 | 8 | 7070 | 12 | 25 | 9 |
ロリポップ! | 34.8 | 12 | 8941 | 10 | 11811 | 7 | 29 | 10 |
WebARENA | 28.1 | 10 | 7829 | 11 | 8726 | 10 | 31 | 11 |
お名前 | 28.6 | 11 | 6496 | 12 | 8375 | 11 | 34 | 12 |
Bizメール | 44.3 | 13 | 3936 | 14 | 4302 | 13 | 40 | 13 |
iCLUSTA+ | 81.1 | 15 | 4230 | 13 | 1121 | 15 | 43 | 14 |
ABLENET | 57.5 | 14 | 3781 | 15 | 4080 | 14 | 43 | 14 |
結果としては、昨年も高いパフォーマンスを出していた、カゴヤと WADAX が今回も 1位と 2位になりました。
エックスサーバーは少し落ちましたが 3位、そしてサーバー環境を一新した heteml が 5位に躍進しています。
今回は、新たに sixcore と CPI を加えましたが、やはり上位層のサービスだけあり、いずれも高いパフォーマンスを見せてくれています。また、昨年新規にサービスを開始した mixhost も加えましたが、なかなか検討していますね。
逆に、昨年上位にいた ABLENET が下位に落ちてしまいました。スペックは同じはずなので、収容サーバーのアタリがちょっと悪かったのかもしれません。
それ以外には、上位陣と下位陣の大幅な入れ替えはないですね。
PHP のパフォーマンスをベンチマークテストで比較 まとめ
以上、PHP のパフォーマンスをベンチマークテストで比較した結果を見てみました。
新たに加えたレンタルサーバーもあるので、少しわかりにくいかもしれませんが、上に書いたように、去年と比較して上位層と下位層が入れ替わったのは heteml と ABLENET だけでした。
(公表している限りで)この 1年で大きくサーバー環境が変わっているのは、エックスサーバーと heteml だけなので、妥当な結果だと言えるでしょう。ABLENET が下がった理由は、はっきりわかりませんが、やはりアタリが悪かっただけのように思います。
また、今回はできるだけサーバー自体の実力を見るために、主流ではなくなりつつある PHP5.6 を使用していますが、パフォーマンスの高い PHP7 以降のバージョンだと、また結果は異なってきますので、実際に使う場合にはまた違った結果になると思います。
なお、実際にレンタルサーバーを利用する上では、PHP を単独で利用することはほぼありませんので、データベースや Webサーバーなどを加えた、トータルでのパフォーマンスを見てサーバーを選ぶことが大事です。
サーバートータルでのパフォーマンス結果は、以下に掲載していますので参照してみてください。