近年は、WordPress をはじめとする CMS(コンテンツマネジメントシステム)が Webサイトやブログの基礎として世界的に使用されていますが、そのコンテンツデータを効率的に蓄積しているのが MySQL などの データベース(DB) です。
データベースの読み出し、書き込みにかかる時間は、Webサイトの表示速度などのパフォーマンスにも大きく影響を与えるため、データベース自体のパフォーマンスも非常に重要です。
ただ、CMS を使用する場合、データベースへ直接アクセスすることはないため、サーバーを単に使ってみるだけでは、データベースのパフォーマンスはわかりません。
そこで、昨年も実施したベンチマークツールを利用したテストで、各レンタルサーバーにおけるデータベースのパフォーマンスをチェックし、比較してみたいと思います。
・PHPspeed で PHP や MySQL などのベンチマークを比較【2016年版】
・レンタルサーバーのベンチマーク総合評価ランキング【2017年版】
データベースのパフォーマンスを PHPspeed でチェック
データベースにもいろいろ種類がありますが、一般的に共用サーバーで使用されているのは MySQL や PostgreSQL です。PostgreSQL は使用できないレンタルサーバーもあるため、MySQL が使用されていることがほとんどでしょう。
最近は、MySQL の派生であり、より高速な MariaDB(マリアディービー) を採用する mixhost なども現れてきており、各社の今後の動きにも注目したいところです。
・「MariaDB」とは?MySQLとのパフォーマンスの差と対応レンタルサーバーをチェック
さて、今回データベースのパフォーマンスをチェックするにあたり、ベンチマークツールとして PHPspeed を用いました。
PHPspeed は、PHP で動作するアプリケーションやデータベース、サーバー自体のパフォーマンスなどを、計 6つのテストで総合的にチェックできるツールです。
この 6つのテストのうち、データベースの処理に関する以下の 2つのテストのデータをあわせて比較します。
- Synthetic MySQL Test(総合的な MySQL テスト / どれだけ早くデータベースに読み書きできるかをテスト)
- Real World PHP w/ MySQL Test(MySQLを用いた PHP の実環境テスト / MySQL へのアクセスを含めた 4つの違ったサイズの PHP ページを読み込む時間を計測)
以上、データベースを絡めた 2つのテストの結果を比較してみました。
ベンチマークの実施条件などの概要
利用するデータベースはいずれも MySQL で、mixhost のみ MariaDB を用います。また、PHP のバージョンは PHP5.6 に統一して実施。(WebARENA のみ、PHP5.6 が利用できないため、PHP5.3)
実施時間に関しては、平日に時間帯を変え、2~3時間おきに計 8回実行しました。
レンタルサーバーは昼間と夜間帯では負荷が異なることが多く、実際のばらつきなどもチェックするために、朝の9時~夜の2時にかけて、となるべく広い時間帯になるよう実施しています。
データベースのパフォーマンス比較
では、テストの結果を見てみましょう。
いずれのテストも、数値が大きいほうがよりパフォーマンスが高いことを示します。
各ツールの結果に対しての順位をそれぞれ出し、次にその順位をトータルでランク付けして、「総合順位」としました。その総合順位の順に上から並べています。
Synthetic MySQL Test | 順位 | Real World PHP w/ MySQL Test | 順位 | 総合順位 | |
mixhost | 13,903 | 2 | 8,371 | 4 | 1 |
heteml | 3,644 | 6 | 9,014 | 3 | 2 |
WADAX | 5,629 | 3 | 7,730 | 6 | 2 |
エックスサーバー | 2,451 | 8 | 9,952 | 2 | 4 |
WebARENA | 16,600 | 1 | 5,297 | 9 | 4 |
ロリポップ! | 3,733 | 5 | 6,590 | 7 | 6 |
CPI | 3,790 | 4 | 6,396 | 8 | 6 |
カゴヤ | 1,659 | 12 | 11,987 | 1 | 8 |
sixcore | 2,105 | 10 | 7,870 | 5 | 9 |
クローバー | 2,270 | 9 | 4,983 | 11 | 10 |
ABLENET | 3,618 | 7 | 3,035 | 13 | 10 |
さくら | 1,048 | 13 | 5,071 | 10 | 12 |
お名前.com | 1,928 | 11 | 4,909 | 12 | 12 |
Bizメール | 1,031 | 14 | 2,380 | 14 | 14 |
iCLUSTA+ | 751 | 15 | 361 | 15 | 15 |
結果としては、MySQL より高速な MariaDB を使用した mixhost が堂々の 1位となりました。
データベースのパフォーマンスが高ければ、テスト自体の処理時間も早く終わるのですが、確かに mixhost はかなりサクサク進む感じで楽でした。逆に下位のサーバーは、テストが終わるのに時間がかかり、若干ストレスを感じるほどでした。
また、昨年サーバー環境を一新した、heteml が 昨年の 6位から 2位へと大きく躍進しているのが目立ちます。昨年 1位にいた WADAX も、しっかり 2位を堅持しました。
まとめ
以上、ベンチマークテストでデータベースのパフォーマンスを確認し、比較した結果を見てみました。
昨年はリリース前だったためにテストを実施していませんでしたが、今回はデータベースに MariaDB を採用している mixhost が高いパフォーマンスを見せて 1位になりました。
国内の共用サーバーでは、これまで MySQL が最も使用されてきましたが、MariaDB はその MySQL から枝分かれしたデータベースシステムで、実は開発者も一緒です。
今後は、共用サーバーのデータベースも、よりパフォーマンスの高い MariaDB に移行していく可能性が高いと思われます。実際にエックスサーバーは、MySQL から MariaDB に移行しました。
もちろん、レンタルサーバーで Webサイトの運営をする場合、データベースを単独で利用することはありませんので、データベースのパフォーマンスだけでサーバーの良しあしは判断できませんが、データベース自体のパフォーマンスが高いサーバーや、MariaDB を採用しているサーバーは、総合的に見ても性能がよい傾向があります。
そのため、MariaDB を採用している mixhost やエックスサーバー、上位にランクインした heteml などは十分オススメできるレンタルサーバーと言えるでしょう。
・「MariaDB」とは?MySQLとのパフォーマンスの差と対応レンタルサーバーをチェック
・レンタルサーバーのベンチマーク総合評価ランキング【2017年版】