2017年3月にロリポップ!が次世代の通信方式である、HTTP/2 に対応しました。
HTTP/2 は従来の HTTP/1.1 と比較して、効率的にデータのやり取りを行えるため、Webサイトの表示速度向上が期待できると言われています。
そこで、日本のレンタルサーバー業界で、いち早く HTTP/2 を採用していた mixhost と ロリポップ! で、HTTP/2 によるサイトの表示速度の変化を確認してみたいと思います。
はたして、本当に HTTP/2 でサイトの表示速度が速くなるのでしょうか?
・ロリポが次世代規格HTTP/2に対応!hetemlやグーペでもSSL証明書が無料~に(ゆる系マンガ解説も)
ロリポップ!のHTTP/2比較サイトの速度変化
まず、ロリポップ!で HTTP/2 をリリースした際に公開された、従来の HTTP/1.1 と HTTP/2 の速度の違いを体感できるページがありますので、こちらの表示速度を確認してみましょう。
以前書いた、HTTP/2 リリース時の記事では、HTTP/2 でサイトの表示速度が向上することが確認できましたが、今回の検証に使用する、サイト速度のパフォーマンスを測定できる GTmetrix での速度も比較してみます。
HTTP/1.1
HTTP/2
プロトコル | HTTP/1.1 | HTTP/2 |
平均値 | 6.8 | 5.2 |
※平日に2~3時間ごとに 7回チェックした平均値
上記のように GTmetrix で確認した場合も、従来の HTTP/1.1 より HTTP/2 のほうが表示が速いという結果が出ました。
ちなみに、このロリポップ!のサイトですが、テキストは少なくて画像が非常に多く、全部で約35枚、トータルのページサイズが 7.21MBと、一般的なサイトよりはかなり大きくなっています。(標準的な Webサイトは、2.4MB程度)
HTTP/2サイトでの表示速度の検証条件
では、現時点で HTTP/2 を利用可能な、mixhost とロリポップ!に作成したサイトで、実際の表示速度を比較してみましょう。速度比較は、上で触れた GTmetrix を使用します。
以下に、前提として検証条件の詳細を挙げておきます。
測定サイトの条件
- WordPress でサイトを作成
- HTTP/1.1(SSLなし)と HTTP/2(+SSL)の平均速度で比較
- 平日の9:00~24:00 の間で、2~3時間おきに合計 7回実施
利用したレンタルサーバー
レンタルサーバーは、現時点で HTTP/2 が利用可能な mixhost とロリポップ!に加え、比較用としてエックスサーバーでも確認しています。
また、mixhost では PHP7.1 が利用できますが、WordPress との相性が悪いことがあったため、PHP7.0 を使用しています。(エックスサーバーも、検証時にはまだ PHP7.1 が利用できなかったため PHP7.0 利用)
レンタルサーバー | PHPのバージョン |
mixhost(スタンダード) | PHP 7.0(「LiteSpeed Cache Plugin」利用なし) |
ロリポップ!(エンタープライズ) | PHP7.1 モジュール版 |
エックスサーバー(X10) | PHP 7.0(「mod_pagespeed」利用なし) |
測定サイトの4パターン
さらに、サイトのコンテンツ内容によりどう変化があるかを確認するため、合計 4つのパターンのサイトを作成し、比較してみます。
サイトの種類 | コンテンツの内訳 |
ノーマルサイト | 文字数 約3000文字+画像1枚 |
長文サイト | 文字数 約37,000文字+画像1枚 |
長文+画像多めサイト | 文字数 約37,000文字+画像6枚(平均66KB/枚) |
画像のみ多数サイト | 画像32枚(平均82KB/枚) |
HTTP/2サイトの表示速度の結果は?
では、各サイトにおける表示速度の結果を、順番に見ていきましょう。
1. ノーマルサイト
ノーマルサイト | HTTP/1.1(SSLなし) | HTTP/2(SSLあり) | ||||
平均値 | 最小値 | 最大値 | 平均値 | 最小値 | 最大値 | |
mixhost | 1.5 | 1.2 | 1.9 | 1.5 | 1.0 | 2.6 |
ロリポップ! | 1.6 | 1.2 | 2.3 | 1.6 | 1.1 | 2.6 |
エックスサーバー | 1.1 | 1.0 | 1.4 | 1.4 | 1.3 | 1.6 |
まず、ノーマルサイトの結果ですが、mixhost と ロリポップ!は、HTTP/2 の最小値が 0.1 秒ずつ縮まっています。しかし、最大値に関しては、逆に伸びていますので、結果的に平均値はどちらのレンタルサーバーも HTTP/1.1 と HTTP/2 で全く同じ結果になりました。
ちなみに、エックスサーバーを見ると、やはり以前の検証結果(WordPressサイトの常時SSL化で表示速度はどう変わるか?)と同様 SSL ありのほうがどの値も速度が遅くなっています。
2. 長文サイト
長文 | HTTP/1.1(SSLなし) | HTTP/2(SSLあり) | ||||
平均値 | 最小値 | 最大値 | 平均値 | 最小値 | 最大値 | |
mixhost | 2.7 | 2.0 | 4.8 | 2.7 | 2.2 | 3.4 |
ロリポップ! | 2.6 | 1.8 | 4.6 | 2.5 | 2.1 | 3.4 |
エックスサーバー | 2.3 | 1.8 | 3.4 | 2.3 | 2.0 | 2.5 |
次は、テキスト量を10倍以上に増やしたサイトです。こちらは、最小値は若干遅くなっていますが、最大値は HTTP/2 のほうが速く、ロリポップ! では平均値でも HTTP/2 の速度が優っています。(mixhost では変わらず)
ただ、最大値が速くなっている点については、なぜか HTTP/2 を使用していないエックスサーバーでも同じ状況なので、HTTP/2 の影響とは言い切れないですね。
3. 長文+画像多めサイト
長文+画像多め | HTTP/1.1(SSLなし) | HTTP/2(SSLあり) | ||||
平均値 | 最小値 | 最大値 | 平均値 | 最小値 | 最大値 | |
mixhost | 2.4 | 2.1 | 2.7 | 3.2 | 2.3 | 5.1 |
ロリポップ! | 2.1 | 1.8 | 3.5 | 2.3 | 2.0 | 2.7 |
エックスサーバー | 2.3 | 2.0 | 2.8 | 2.5 | 2.2 | 3.3 |
次は、テキスト量の多いサイトに、画像を少し増やしたものです。
こちらも、ロリポップ!では最大値が HTTP/1.1 よりも速い結果が出ているため、平均値ではそれほど変化はありませんが、mixhost はややブレが大きく、いずれも HTTP/2 が大きくなっています。
エックスサーバーも SSL ありのほうがすべての値が大きくなっていますね。
4. 画像のみ多数サイト
画像のみ多数 | HTTP/1.1(SSLなし) | HTTP/2(SSLあり) | ||||
平均値 | 最小値 | 最大値 | 平均値 | 最小値 | 最大値 | |
mixhost | 3.3 | 2.8 | 4.8 | 4.4 | 2.3 | 9.4 |
ロリポップ! | 2.1 | 1.7 | 2.5 | 2.1 | 1.6 | 2.5 |
エックスサーバー | 2.0 | 1.8 | 2.8 | 2.2 | 2.0 | 2.5 |
最後は画像のみ多数を掲載したサイトです。ロリポップ!の比較サイトの構成に近い感じですね。
こちらは、mixhost とロリポップ!で最小値が若干縮まっています。mixhost は 3つ目の「長文+画像多めサイト」と同様、最大値のブレが大きくなってしまっているため、トータルでは HTTP/2 が遅くなっていますが、ロリポップ!はすべての値がほぼ同じ数値になっています。
エックスサーバーはいずれも SSL が遅くなっていますね。
HTTP/2でどう変わる?サイトの表示速度を詳しく検証まとめ
以上、従来の HTTP/1.1 と 次世代規格の HTTP/2 でのサイト表示速度を比較してみました。
結果からいうと、今回作成した 4パターンの WordPress サイトでは、従来の HTTP/1.1 より HTTP/2 のほうが表示が速くなる、と言えるような結果は出ませんでした。
実はロリポップ!が HTTP/2 の提供を始める前に、すでに mixhost で検証を行っていたのですが、やはりハッキリした結果がでない、というかむしろ悪い結果が出ていたため、今回はサイトも 4パターンに増やして、色々な角度から検証をしてみたのですが、ロリポップ!でも目に見えるような差は出ませんでした。
最初に紹介した、ロリポップ!の比較ページは、明らかに HTTP/2 のほうが表示速度が速いという結果が出ていましたが、おそらく再現性が高くなるように、かなり細かくチューニングしているのだと思います。
ただ、ノーマルサイト、長文サイトではやはり地力の強いエックスサーバーが速かったのですが、長文+画像、画像のみ多数の 2サイトに関しては、ロリポップ!のほうが速い結果が出ていますので、総合的にみると HTTP/2 の影響はあると言えるかもしれません。
また、レンタルサーバー業界も技術革新が非常に速いため、今後の Web が向かう方向性によっては、HTTP/2 が大きな力を発揮するようになっていくと思います。今後はロリポップ!や mixhost 以外もどんどん HTTP/2 を採用してくると思いますので、また別の機会に色々検証してみたいと思います。