ネットビジネスのためのレンタルサーバーにとって、最も重要なのは安定性。収益源となっている Webサイトが、表示されたりされなかったりするような状況が発生するのを防ぐためには、この安定性をチェックすることが必要です。
ただ、Webサイトを頻繁にチェックしたとしても、サイトの表示速度はわかりますが、よほど頻繁にサーバーが落ちてしまうような状況が発生しない限り、目視で安定具合をチェックするのは困難です。
また、サーバーエラーや障害以外でも、様々な要因によって Webサイトが一時的に表示されなかったり、表示に時間がかかってしまうといったことは日常的に起こりえます。エラーや障害が発生した場合には、ログや障害情報をチェックすればわかりますが、明らかな症状がない場合には、その問題に気づくことすらできません。
そこで、サーバーの状況を監視できる専用のサービスを利用して、Webサーバーの安定性と応答速度をチェックし、比較してみました。
・Webサーバーの安定性を独自調査データで比較【2018年版】
・Webサーバーの安定性と応答速度をツールで比較(monitis)【2017年版】
・Webサーバーの安定性を monitis で比較チェック【2016年版】
Webサーバーのモニタリング実施概要
Webサイトの安定性と応答速度を調査するため、例年通り monitis というサービスを利用しました。monitis はサーバーをモニタリングするための多くのサービスを提供していますが、ここでは Uptime Monitoring という死活監視の機能を利用して、Webサーバーの稼働状況をチェックします。
具体的にチェックするデータは、以下のような情報です。
- Webサーバーが常時稼働しているか
- リクエストに対し、コンテンツのデータをきちんと返しているか(Webサイトが表示されているか)
- どれくらい速く応答しているか
これらの状況をチェックすることで、Webサイトが常時表示されているか、またどのくらい速く応答できているか、を知ることができます。
測定条件の詳細
今回もすべてのサーバーに、全く同じ内容の WordPress サイトを構築します。そして、測定するサーバーから、各サイトに「HTTPリクエスト」を投げて、その応答状況を比較するという形で実施しています。
以下が、その詳細条件です。
WordPress のバージョン | ver.5.0 |
---|---|
WordPress のテーマ | Twenty Nineteen |
WordPress プラグイン | WP Multibyte Patch / Akismet / Hello Dolly |
PHPのバージョン | PHP 7.2 (※ロリポップ!と heteml・sixcore は PHP 7.2 利用不可のため 7.1) |
PHPのモード | CGIモード (※ ConoHa WING/mixhost/ColorfulBox は LSAPI(LSPHP)) |
コンテンツ内容 | WPテーマユニットテスト (すべてのコンテンツをトップページに表示した状態) |
測定ツール | monitis 測定元サーバー(東京・新宿) |
測定期間 | 7日間(2019年3月実施) |
測定内容 | httpリクエストへの応答状況 (60秒毎にリクエスト実施/10秒でタイムアウト) |
測定状況の流れ | 日本国内のサーバーから HTTP リクエストを送信 リクエストは 1分毎に送信し、10秒で返信がなければタイムアウトとする コンテンツ内の特定の文字列が返ってくるかもチェック |
プラグインに関しては、WordPress をインストールした際にデフォルトで導入されているもので、特に意味はありません。
ロリポップ!・heteml・sixcore は PHP のバージョン 7.2 が未対応のため、v7.1 で確認しています。
また、高速化については、エックスサーバー系列(エックスサーバー・sixcore・スターサーバー)で解除不可の「FastCGI」「OPcache」以外は、キャッシュ系のプラグインや高速化処理は使用していません。
コンテンツは、WordPress Codex で提供されている「WPテーマユニットテスト」というデータを利用しています。テキストの量もほどほど、画像や Youtube なども貼り付けられているので、現実のブログなどに近いデータ量になっています。誰でも利用できるコンテンツなので、今回検証した条件を再現することも可能です。
なお、基本的に月額料金が 1,000~2,000円程度のプランを検証の対象としていますが、今回もスターサーバー・ロリポップ!・さくらインターネットに関しては、月額500円台の「スタンダード」プランを使用して検証しています。これは、全プランの中でもユーザー数が一番多いこと、上位プランより性能がいい、の 2つの理由からです。
また、計測後にお名前.comレンタルサーバーのプランがリニューアルしましたが、今回は以前のプランでの計測結果を掲載しています。
Webサーバーの安定性比較
さて、実際に Webサーバーの安定性の状況を比較してみましょう。
チェックする項目は 2つで、「応答なし回数」と「平均応答速度」で、それぞれを順位付けしたものを総合して、総合順位をつけています。
- 応答なし回数:リクエストに対して 10秒以内に最初の応答が返らなかった回数(0に近いほど安定)
- 平均応答速度:リクエストに対しする応答速度
要するに、「応答なしの回数」が少ないほど、また「平均応答速度」が速いほど、安定しているサーバーと考えます。
以下にその結果を、個人向けサーバーと法人向けサーバーで分けて掲載します。
個人向けサーバーの安定性比較
サーバー名 (プラン名) |
応答なし回数 (回) |
平均応答速度 (ミリ秒) |
総合順位 |
---|---|---|---|
ConoHa WING (ベーシック) |
0 | 124.1 | 1 |
エックスサーバー (X10/スタンダード) |
0 | 254.1 | 2 |
heteml (ベーシック) |
0 | 397.5 | 3 |
ColorfulBox (Box2) |
0 | 676.5 | 4 |
スターサーバー (スタンダード) |
1 | 242.7 | 5 |
mixhost (スタンダード) |
0 | 815.6 | 6 |
ロリポップ! (スタンダード) |
2 | 363.9 | 7 |
お名前.comレンタルサーバー (SD-11) |
1 | 805.8 | 7 |
さくらのレンタルサーバ (スタンダード) |
1 | 2164.2 | 9 |
※無断転載禁止
今回は応答なしの回数においては、すべてのサーバーで非常に安定した傾向が見られました。最大でも 2回でしたので、ほぼ差はないと言っていいでしょう。
一方、平均応答速度にはそれなりに大きな差が出ました。昨年リリースしたばかりの ConoHa WING が圧倒的に安定、かつ高速での応答を返しています。
上記の表には書いていませんが、応答側のブレが最も少なかったのも ConoHa WING でしたので、こちらの記事にも書いたようにやはり Web サーバーの安定性においては、高い性能を発揮していることがわかります。
一方、対極にあるのが、さくらのレンタルサーバ。今回は応答なし回数が減ったものの(昨年は 8回)、平均応答速度が 2000 ミリ秒を超えてしまいました。昨年は 1246.5 ミリ秒だったので、状況によってはもう少し良い数値は出ると思いますが、それでもビリには変わりないですね。
昨年ビリだったお名前.comサーバーは、今年はいい数値が出ています。お名前サーバーは個体差が結構大きいのか、成績が良い年の次は悪く、その次はまた良くなる、という感じ不思議な感じです。
今回は ConoHa WING の台頭でトップを逃したものの、例年トップ争いをしているエックスサーバーと heteml は、抜群の安定さを見せてくれました。
法人向け Webサーバーの安定性比較
サーバー名 (プラン名) |
応答なし回数 (回) |
平均応答速度 (ミリ秒) |
総合順位 |
---|---|---|---|
sixcore (S1) |
0 | 398.3 | 1 |
WADAX TypeS(シルバー) |
7 | 541.4 | 2 |
iCLUSTA+ (ミニ) |
8 | 1844.1 | 3 |
※無断転載禁止
こちらも「応答なし回数」は少なめに抑えられており、毎年応答が遅い iCLUSTA+ も、今回はなかなか善戦しています。(昨年 83回→今年 8回)
また、平均応答速度も昨年の 4018.0 ミリ秒から 1844.1 ミリ秒と、大幅に改善が見られました。
毎年安定の sixcore と WADAX は、昨年と比べどちらもそれほど大きな違いは見られません。
なお、CPI(シェアードプランACE01)については、どうやら IPS やファイアウォールレベルでモニタリングを遮断されてしまったようで、計測ができませんでした。会社側に依頼しないとモニタリングができなさそうなので、後日実施ができたら公開したいと思います。
「応答なし」の発生原因とは
上に挙げた「応答なし」とは、サーバーログを確認する限りでは、障害などによるサーバー停止が原因であることはほぼありません。
そのほとんどが、何らかの原因でサーバーからの応答が遅くなったり、帰ってこなかったりしたことが原因のため、当サイトで紹介しているレベルのサーバーであれば、サーバー自体が簡単に落ちてしまうということはほとんどないと考えていいです。
おそらく、一時的な負荷や経路上の問題などが考えられますが、同じ条件ですべてのリクエストに応答を返せているサーバーがあることを考えると、やはり応答なしの回数が多めのサーバーは、やや不安定と考えていいでしょう。
まとめ
以上のように、一応わかりやすく比較するために順位付けはしましたが、たとえ「応答なし」が1週間で20回発生したとしても、10,080回のリクエストに対しては、たったの 0.2%にしかすぎません。
ですから、多少の応答なしがあっても、基本的にそれほど気にする必要はないでしょう。また、多少応答に遅れがあっても、ほとんどの場合、サイトの表示はできるはずです。そのため、応答なしの回数と平均応答速度が、他と比べて明らかに遅いものを避ければいいでしょう。
もちろん、アクセスが増えてくれば、収益機会を逃す可能性もあると思いますので、やはりできるだけサーバーの応答が速く、安定したサーバーを選択するのがおススメです。
そういう意味では、何年も上位を達成しているエックスサーバーや同じく heteml はおススメです。
また、法人であれば sixcore や WADAX は堅いところですので、安心して利用できるサーバーと言えるでしょう。(※ sixcore はサービス終了のため、現在は「エックスサーバービジネス」がおすすめ)