Webサーバーの安定性を独自調査データで比較【2020年版】

Webサーバーの安定性を独自調査データで比較【2020年版】

ネットビジネスのためのレンタルサーバーにとって、最も重要なのは安定性。収益源となっている Webサイトが、表示されたりされなかったりするような状況が発生するのを防ぐためには、この安定性をチェックすることが必要です。

ただ、Webサイトを頻繁にチェックしたとしても、サイトの表示速度はわかりますが、よほど頻繁にサーバーが落ちてしまうような状況が発生しない限り、目視で安定具合をチェックするのは困難です。

また、サーバーエラーや障害以外でも、様々な要因によって Webサイトが一時的に表示されなかったり、表示に時間がかかってしまうといったことは日常的に起こりえます。エラーや障害が発生した場合には、ログや障害情報をチェックすればわかりますが、明らかな症状がない場合には、その問題に気づくことすらできません。

そこで、サーバーの状況を監視できる専用のサービスを利用して、Webサーバーの安定性と応答速度をチェックし、比較してみました。

なお、これまでは年に一度のみ調査を実施していたのですが、2019年後半からは毎月データ収集をしています。

これは、収容サーバーごとのバラツキについても比較するためです。共用サーバーは申し込んだタイミングでサーバーが勝手に割り当てられますが、利用しているサーバーによってどのくらいの違いがでるかもチェックしたかったという理由です。(※ 法人向けは予算の関係で毎月は実施していません)

Webサーバーのモニタリング実施概要

Webサイトの安定性と応答速度を調査するため、例年通り monitis というサービスを利用しました。monitis はサーバーをモニタリングするための多くのサービスを提供していますが、ここでは Uptime Monitoring という死活監視の機能(サーバーがきちんと稼働して、応答しているかをチェックする機能)を利用して、Webサーバーの稼働状況をチェックします。

具体的にチェックするデータは、以下のような情報です。

  • Webサーバーが常時稼働しているか
  • リクエストに対し、コンテンツのデータをきちんと返しているか(Webサイトが表示されているか)
  • どれくらい速く応答しているか

これらの状況をチェックすることで、Webサイトが常時表示されているか、またどのくらい速く応答できているか、を知ることができます。

測定条件の詳細

今回もすべてのサーバーに、全く同じ内容の WordPress サイトを構築します。そして、測定するサーバーから、各サイトに「HTTPリクエスト」を投げて、その応答状況を比較するという形で実施しています。

※「HTTP リクエスト」=ブラウザが Webサーバーに、サイトのデータを送り返すように要求する命令のこと。ブラウザで Webサイトの表示をするのと同じプロセス。

以下が、その詳細条件です。

WordPress のバージョン ver.5.0
WordPress のテーマ Twenty Nineteen
WordPress プラグイン WP Multibyte Patch / Akismet / Hello Dolly
PHPのバージョンと動作モード 各サーバーで自動的に設定されるバージョンとモードを使用
(機能が随時アップデートされ変更されているため)
コンテンツ内容 WPテーマユニットテスト
(すべてのコンテンツをトップページに表示した状態)
測定ツール monitis
測定元サーバー(東京・新宿)
測定期間 個人向け:各7日間のチェックを7か月間(2019年6月~12月実施)
法人向け:各7日間のチェック(2020年1月実施)
測定内容 httpリクエストへの応答状況
(60秒毎にリクエスト実施/10秒でタイムアウト)
測定状況の流れ 日本国内のサーバーから HTTP リクエストを送信
リクエストは 1分毎に送信し、10秒で返信がなければタイムアウトとする
コンテンツ内の特定の文字列が返ってくるかもチェック

これまで可能な限り同じ条件で比較をするようにしていましたが、長期間に渡り複数のサーバーを調査することにしたため、PHP のバージョンなどを同一にするのが難しい状況になりました。

そのため、PHP のバージョンやモードなどの細かい設定については、各サーバーで自動的に設定される初期状態の設定をそのまま使用しています。

プラグインに関しては、WordPress をインストールした際にデフォルトで導入されているもので、特に意味はありません。

コンテンツは、WordPress Codex で提供されている「WPテーマユニットテスト」というデータを利用しています。テキストの量もほどほど、画像や Youtube なども貼り付けられているので、現実のブログなどに近いデータ量になっています。誰でも利用できるコンテンツなので、今回検証した条件を再現することも可能です。

なお、基本的に月額料金が 1,000~2,000円程度のプランを検証の対象としていますが、今回もスターサーバー・ロリポップ!・さくらインターネットに関しては、月額500円台の「スタンダード」プランを使用して検証しています。これは、全プランの中でもユーザー数が一番多いこと、上位プランより性能がいい、の 2つの理由からです。

Webサーバーの安定性比較

さて、実際に Webサーバーの安定性の状況を比較してみましょう。

チェックする項目は 2つで、「応答なし回数」「平均応答速度」で、それぞれを順位付けしたものを総合して、総合順位をつけています。

  • 応答なし回数(単位:回):リクエストに対して 10秒以内に最初の応答が返らなかった回数(0に近いほど安定)
  • 平均応答速度(単位:ms ミリ秒):リクエストに対し返答を返した応答速度

要するに、「応答なしの回数」が少ないほど、また「平均応答速度」が速いほど、安定しているサーバーと考えます。

以下にその結果を、個人向けサーバーと法人向けサーバーで分けて掲載します。

個人向けサーバーの安定性比較

順位 サーバー名
(プラン名)
応答なし回数(回)
応答速度(ms)
平均 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
1 ConoHa WING
(ベーシック)
0.1 0 0 0 0 0 1 0
143.5 108.7 48.6 168.8 185.4 172.0 183.8 137.1
2 エックスサーバー
(X10)
0.4 0 3 0 0 0 0 0
213.3 147.0 180.5 181.7 387.1 254.1 172.2 170.5
2 ColorfulBox
(Box2)
0 0 0 0 0 0 0 0
354.4 471.5 268.1 240.3 151.4 379.8 591.2 378.6
4 ロリポップ!
(スタンダード)
11.9 10 0 1 43 28 1 0
324.7 307.7 319.2 346.7 137.2 430.5 347.7 384.0
5 スターサーバー
(スタンダード)
10.6 0 53 15 1 0 4 1
377.3 264.0 281.6 287.2 413.0 714.7 400.1 280.3
6 heteml
(ベーシック)
16.0 7 13 0 6 68 13 5
364.4 500.1 452.6 294.5 307.1 354.6 357.7 284.5
6 さくらのレンタルサーバ
(スタンダード)
4.7 0 1 18 0 14 0 0
978.6 1139.4 982.4 935.2 1030.0 901.7 987.2 874.0
8 mixhost
(スタンダード)
36.3 47 44 84 75 3 1 0
410.1 166.4 604.6 418.5 455.7 200.7 471.0 554.0

※無断転載禁止

サーバー1つずつの状況について見ていきます。

まず、トップの ConoHa WING は、リリース当初からサーバーの応答速度は非常に速く、安定性もかなり高い状況でしたが、収容サーバーを変更してもダントツで安定感がある結果を見せてくれました。

なぜか、7月に極端に応答速度が速い結果が出ていますが、これはあくまで例外と見たほうがよさそうです。それでも十分トップに君臨できるレベルの結果ですね。

次点はエックスサーバーです。こちらも安定して高い数値が出ています。9月と10月に応答速度で 200~300ms 台の結果が出ていますが、他は安定して 100ms 台の結果が出ています。

3位は ColorfulBox(カラフルボックス) です。応答速度に関しては、ややバラツキが見られるものの、応答なし回数がすべて0という快挙を成し遂げています。CPU とメモリのスペックが非常に高いので、その影響でしょうか、安定性にかけてはかなりのものと言えます。

4位はロリポップ!。上位の 2社に比べると応答速度は速くはないものの、比較的安定した速度が出ています。

応答なしの回数に結構ばらつきがありますので、そこは少し気になりますが、昨年リリースした「ハイスピード」プランはなかなか良いので、今後に期待したいところです。

5位はスターサーバー。10月に応答速度が 700ms 台と応答なしが53回と、良くない数値が出てしまっていたので、その影響でやや順位を落としてしまっていますが、トータルで見るとそれほど悪くはない結果と言えます。

6位は heteml(ヘテムル)。これまで上位に位置していましたが、少々収容サーバーによるバラツキが大きく出てしまっており、トータルでは下位にランクしてしまいました。

また、同じ価格帯のロリポップ!のハイスピードプランがリリースされたことにより、残念ながら今後はその存在価値が問われそうです。

7位はさくらのレンタルサーバ。さすがは大手の余裕か、応答なしの回数はかなり少ないほうで、そこだけみると中位に位置するのですが、いかんせん応答速度がかなり遅いのが悔やまれます。

そして、今回最下位である 8位になってしまったのは mixhost。6月から9月までの応答なし回数が、コンスタントに多いことが原因ですね。

ただ、10月以降は応答なし回数が激減しています。また、11月後半から12月にかけて、転送量目安の緩和や CPU のスペックアップを図っているので、今後に期待です。

法人向け Webサーバーの安定性比較

順位 サーバー名
(プラン名)
応答なし回数
(回)
平均応答速度
(ミリ秒)
1 シックスコア
(S1)
0 363.4
1 WADAX
TypeS(シルバー)
3 324.2
3 CPI
(シェアードプラン SV-Basic)
0 420.3
4 iCLUSTA+
(ミニ)
30 1306.7

※無断転載禁止

Web サーバーの応答速度に関しては、個人向けと比べて法人向けは全体的に遅めです。

以下、サーバー1つずつコメントしていきます。

今回トップは同率でした。まず、シックスコアは、平均の応答速度自体は WADAX に及びませんでしたが、僅差です。一方、応答なしの回数は「0」に収まったため、こちらも誤差レベルではありますが、安定性からいうとシックスコアのほうが上でした。

同率 1位のもう一方は WADAX。平均応答速度は sixcore を上回っていたものの、応答なしが 3回ほど出てしまいましたが、ほぼ同等の実力と言っていいでしょう。

3位は昨年リニューアルした CPI シェアードプラン SV-Basic。応答速度は上位 2つと比べると劣るものの、安定性はかなり高いです。

ちょっと見にくくなるので省いたのですが、最も応答が遅れた数値を見比べると、CPI が 1473.0ms であるのに比べ、sixcore が 5415.0ms、WADAX が 9724.0ms なので、圧倒的にブレが少ないことがわかります。

CPI の安定感は以前から高いので、ここはやはり回線を持っている KDDI の強みというべきところかもしれません。

ラストは iCLUSTA+。平均応答速度が他社の 3~4倍なので、やはり上位に食い込むのはまだ厳しい状況ですね。

「応答なし」の発生原因とは

上に挙げた「応答なし」とは、サーバーログを確認する限りでは、障害などによるサーバー停止が原因であることはほぼありません。

そのほとんどが、何らかの原因でサーバーからの応答が遅くなったり、帰ってこなかったりしたことが原因のため、当サイトで紹介しているレベルのサーバーであれば、サーバー自体が簡単に落ちてしまうということはほとんどないと考えていいです。

おそらく、一時的な負荷や経路上の問題などが考えられますが、同じ条件ですべてのリクエストに応答を返せているサーバーがあることを考えると、やはり応答なしの回数が多めのサーバーは、やや不安定と考えていいでしょう。

まとめ

以上のように、一応わかりやすく比較するために順位付けはしましたが、たとえ「応答なし」が1週間で20回発生したとしても、10,080回のリクエストに対しては、たったの 0.2%にしかすぎません。

ですから、多少の応答なしがあっても、基本的にそれほど気にする必要はないでしょう。また、多少応答に遅れがあっても、ほとんどの場合、サイトの表示はできるはずです。そのため、応答なしの回数と平均応答速度が、他と比べて明らかに遅いものを避ければいいでしょう。

もちろん、アクセスが増えてくれば、収益機会を逃す可能性もあると思いますので、やはりできるだけサーバーの応答が速く、安定したサーバーを選択するのがおススメです。

そういう意味では、何年も上位を達成しているエックスサーバーは安心しておすすめできるサーバーです。また、まだ稼働実績は短いですが、ConoHa WING に関しては、新規の強豪ひしめく中、頭一つ抜け出ている印象があり、こちらもおすすめできるサーバーと言っていいでしょう。

また、法人であればシックスコアは提供を終了したため、その後継サービスである、エックスサーバービジネスWADAX は堅いところですので、安心して利用できるサーバーです。


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